悲惨な環境に置かれた子どもたちの写真を見つめる姉妹
1989年10月、ニューヨークの国連本部をスタートに、ボストン、ジュネーブ、モスクワ、オスロの世界5都市で「不戦」と「平和」の波動を広げてきた「戦争と平和展」の国内初の開催となる広島展が1991年8月3日、広島池田平和記念会館でオープンした(〜20日まで)。展示は「人類の課題 生命の世紀をひらくために」のテーマのもと、120点の写真・文字パネル、物品などで構成。なかでもチェルノブイリ原発事故の記録写真、物品は日本初公開となった。
【 識者の声から 】(肩書きは1991年8月当時)
SGIの平和運動に感謝
国連広報センター長
ミアン・カドルディン
 「戦争と平和展」の開催地として、この広島市ほどふさわしい場所はないと思います。近代戦争の恐ろしさを私たちに思い起こさせるとともに、広島の復興は、平和行動を通し、社会の繁栄を実現しようとする人間の不屈の意志を象徴しております。国際関係においても我々は新しい時代に入ろうとしています。世界の対立する陣営の緊張が徐々に緩和され、冷戦に終止符が打たれました。国際社会は平和の実現、人々の生活環境の向上、そして未来世代のための地球環境保全を目指し前進しつつあります。本展は平和の意味、恒久平和構築のための確固たる基盤づくりに何が必要なのかを社会に広く訴え、理解を促すうえで非常に有効であるといえましょう。恒久平和の実現は、経済または社会的福祉と安定、貧困と不正の撲滅、個人の人権の保障、地球の自然環境の保全などの基盤なくしてありえません。これらのテーマすべてが、本展にはかくも鮮やかに、また明快に提示されております。
人類が進むべき道を考察
ソ連平和委員会議長
ゲンリッヒ・A・ボロビック
 この展示会は非常に重要な意味を持っていると思います。人生は道に例えられます。時間が経つにしたがって、人間はその道に沿って進んでいきます。しかし、時々立ち止まって深く思索する必要があります。自分の人生を振り返って見て、命の洗濯をすることが必要です。これと同じように人類も立ち止まって、落ち着いて深く思索する必要があります。この展示は、ちょうどよい機会だと思います。人類はここに来て歴史を振り返るとともに、これから進んでいく道について深く考えさせられるのではないか、と思います。人類は“善のポテンシャル(潜在能力)”も大きいし、悪のポテンシャルもあります。善と悪との比率によって、これからの人類の歴史が決められると思います。この展示こそ善の必要性を強調するものになると思います。
近代史学ぶ貴重な資料
広島県知事
竹下 虎之助
 「戦争と平和展」の国内初の開催地として広島を選んでいただき、感謝いたします。平和問題を論じる際、大切なことは、“アジアの中の日本”、そして“アジアの中の広島”という視点に立つことです。ともすれば、私たちは原爆投下に対する被害者意識が先行してしまい、アジア諸国に対する日本が犯した正史を見失いがちです。そこで大切なのはアジア、世界の近代史を正確に学び、謙虚な姿勢で具体的な行動を起こすことです。そうした意味を含めて、この展示会は大変な示唆を与えてくれます。特に今世紀の紛争と暴力の歴史、軍事利用費を難民救済・環境保全費に転換した時の効用の大きさなどが、克明に紹介されている企画は圧巻です。できるだけ多くの人にこの展示をご覧いただき、核兵器のない世界の恒久平和が、一日も早く実現することを期待いたします。
今日的諸問題を知る好企画
広島市長
平岡 敬
 今日の地球と人類が抱えている数々の問題が分かりやすく、グラフや数字を使って展示されており、大変に勉強になりました。特に感じたことは、実際の戦闘はないが、人権、環境破壊、飢餓、難民問題、暴力など、人類の生存を脅かす諸問題は、世界の中に渦巻いている、ということです。これらの諸悪の象徴が核兵器だと思います。常々私たちが思い、主張し続けている事柄がよくまとめられています。この展示を機に、広島市民として、平和な世の中を実現することに更に努力を払ってまいりたい。
共に生命守る反核の活動を
IPPNW(核戦争防止国際医師の会)副会長
横路 謙次郎
 ひとたび戦争が起きた時に最も害を被るのは一般市民です。IPPNWは、生命を守るという観点に立ち、反核への啓蒙的な活動を行っておりますが、「戦争と平和展」はSGIと私どもが目指す目的を一にするところから共催するにいたりました。人類は過去4分の3世紀の間、2度の世界大戦をはじめ全く狂気の中にありました。狂ったように戦争への道を走り続けてきたわけであります。開幕式でソ連平和委員会の方が人類の歴史を道にたとえ、“少しは立ち止まって思索する時をもつ必要がある”とスピーチされた言葉に、私も強い共感を覚えました。このような展示会は大人もさることながら、感受性豊かで、これからの時代を担う子どもたちにも有意義であると思います。
“地球的警鐘”の訴えに共感
青少年育成県民会議会長(前広島大学学長)
沖原 豊
 アメリカの経済学者であるケネス・ボールディング氏は、その著書の中で、人類の将来に数々の落とし穴がある、と警鐘を鳴らしています。その第1が戦争であり、また、発展途上国の飢餓や経済、人口の抑制、資源の浪費、更に人権問題ですが、いずれも全地球的な課題となっています。こうした20世紀の病める課題を、どう克服し、新しい21世紀を築いていくか…。今回の「戦争と平和展」のパネルには、そうした“地球的警鐘”が的確に表現され、改めて教そわる思いがしました。それらは決して楽観できるものではありません。月にまで人類が到達する科学発展の反面、それに伴う歪みの象徴的なものとして原爆があります。今回の展示を通じて、人類が抱える「発展」と「抑制」という重大な2つの局面をリードしていく教育と哲学の必要性を実感しました。
類例のない充実した内容
広島商工会議所会頭
橋口 収
 「戦争と平和」のテーマで、これだけ正面から系統立てて取り上げた展示は、他に類例がないでしょう。よくぞこれだけの写真を集め、パネルを作成されたものだと感心しました。第1、2次の大戦、そして地域紛争に関しても、初めてみる写真が随分ありました。しかも大変にインパクトを与える内容になっています。1枚の写真にも、その背景には膨大な歴史がありますので、2、3時間かけて会場を回っても、とても足りないほど充実したものです。地球環境の危機が叫ばれ、対立から協調の時代に入った今、この会場を訪れる市民の皆さんが、今回の展示会を一過性のものにすることなく、大きくて深い人類的課題について、できるものがあれば1つでも実行に移していく――そういうことを皆で考える機会になればと切望します。
完全軍縮へ時宜得た催し
広島女学院大学名誉教授
庄野 直美
 現在から未来への人類の課題を全体的に把握できる、見事な展示です。国連等の場に報告され、討議されてきたデータやグローバルな視座が適切に整理・編集された展示が、世界を巡回されている意義は誠に大きい。私は10年位前までは、人類に21世紀はないだろう、核戦争で滅亡してしまうだろうと悲観的に考えていました。それが東西冷戦の終結という新しい展開になり、状況は好転しました。米ソ首脳会談における戦略兵器削減条約調印後、すぐに人類が初めて核兵器を経験したヒロシマで「戦争と平和展」が開催されることは、世界の民衆の切実な願いである核完全軍縮の機運を一段と高めるうえで時宜を得たものであると評価します。思うに核兵器の存在は科学技術がもろ刃の剣であることを象徴しています。もし人類の英知が核の脅威を克服しうるならば、環境・人権・南北問題等の諸問題を解決する希望も持てるでしょう。
被爆者の声を代弁する展示
日本被団協代表委員
伊藤 サカエ
私たち被爆者の願いは“戦争をしないでください”“再び核戦争はしないでください”ということです。ですから学会の皆さんが真心から、こういう尊い“平和展”を開いて、私たちの言いたいことを世界中の人々に、訴えてくださっていることは、本当に有り難く感謝しております。この展示は、国連事務総長と池田SGI会長との懇談から生まれたと聞きましたが、美辞麗句の多いこの外交の中で、約束が現実に実行されることは素晴らしいことです。核兵器はまだ全廃されていませんし、人種差別の傲慢さや不信はまだ根強いものがあります。そうしたことも、この展示は示してくれています。尊い生命、一人一人の人間を大切にしなければならない、とのこの展示の訴えを、世界中の人々が実行に移さないと平和は築けないと思います。